尖閣衝突ビデオ 【コラム】

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 尖閣衝突ビデオの流出事件が喧しい。国家公務員法違反の告発を受けて司法当局が捜査に乗り出したが、なんとも意気の上がらぬ仕事になりそうだ。「よくやった」とか「犯人探しはやめて」とか、流出擁護の素朴な声がマスコミに溢れる中で、形式捜査をどこまで貫けるか、見ものではある。
 と書いた途端に、神戸の第五管区海上保安本部の職員が「私がやりました」と名乗り出た。犯人探しはいきなりゴールインの様相だが、何だか話がオカシイ。そんなに関単には解決が付くはずはないと、素人でさえ訝る。
 大手のマスコミには、「(流出者は)英雄だ。」「(処罰すべきは)むしろ仙石だ、菅だ」という擁護論が殺到したらしい。これはこれで立派な本質論だが、真実に迫るという点では妄言でしかない。政府批判を装って、そんな虚妄に頼るマスコミのやり方も情けない。
 そもそも、あの映像は機密情報だったのか。入手経路について、五管(神戸)の保安官は「他に迷惑をかけたくない」と語り、どうやら自分が勤務で乗船する巡視艇のパソコンからダウンロードしたようだ。
 ということは、尖閣諸島の海上にいた複数の船艇が撮影した映像が石垣海上保安部に一旦集約され(集約前の生データが中央の海上保安庁にも届いたかもしれない)、編集の上でひとつのまとまりあるデータ(流出したデータ)になった。これが、ほぼその瞬間に日本全国の海上保安の艦艇に同時拡散した。海を守る男たちが共有すべき情報として、組織の業務として、あるいは警備救難の仲間に知らせるべき情報として発信(耳打ち)された。従って、海上保安官ならどこにいてもこの情報に接することが出来た、ということだ。
 果たしてこれが機密情報なのか。「国家機密」は後付の、手遅れ措置でしかなかったことがハッキリしてきた。これまた、菅政府の、言葉の意味すら理解していない低能ぶりだ。
 さらに、誰もが入手できたこの情報を、神戸の漫画喫茶から発信した行為が、名乗り出た保安官一人の単独行動だったのか否か。お手伝い・支援の、あるいは暗黙に許諾し、もしかしたら依頼・命令した仲間や上司がいたのか、これを突き詰めるのが難物だ。
 「機密」という言葉の定義さえ曖昧にして権力を振りかざし、逮捕さえ出来ずに結局は自分で自分の首を絞めた。適当なところでスケープゴートを仕立てる従来の常道が、大阪地検特捜部のアノ事件が明るみになった今、そう抜け抜けとやれはしまい。生徒会内閣のお手並み拝見だが、政権崩壊の方が早かろう。
 それより、この騒ぎに隠れてウヤムヤになりそうなのが警視庁公安部の機密漏洩事件だ。
 こちらは生データを履歴書付きで漏らしたのではなく、PDF化することで身元を消しているとか。短絡的な仕事ではない。むしろ陰謀というべきか。
「捜査従事者の名前等個人情報が流出したのが、国家機関としての大損害」という論評もあったが、より重大なのは情報協力者の個人データではないか。
 国家・組織の従事者は差し替えが利くが、巷の一個人は、人知れず消され、殺されて、その理由すら明かされることがない。使い捨てのムダ死には、権力にシッポを振った報いなのかな。(醒)

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